形紙の量産化を可能にした
型地紙の「重ね彫り」

染形紙は商品としてひとつの柄が一枚単位で販売(またはリース)されるため、一度の彫刻作業で一枚ずつ制作していたのでは生産効率が上がりません。そこで、複数枚の型地紙を重ねて彫刻する「重ね彫り」で、数枚の染形紙を一度に彫り上げるのが一般的でした。中には12~24枚も重ねて彫刻した錐彫りの「厚重ね」の例もありますが、突彫りの場合、6枚前後が普通だったようです。
厚重ねを可能にするポイントは、彫刻刀の刃の薄さ。刃が薄ければ幾枚も重ねた紙でも均一に彫り抜くことができます。もちろん、それだけ薄い刃を折らずに彫り抜く技量も不可欠でした。
なお、一番下に重ねた地紙を「底型」といい、完全に彫り切られていない部分が残るため売り物にはならないことから、これが多数遺されていることが、その地域が染形紙の産地であったことの証しともなります。

型地紙の素材と製法 型彫りの技 ▷「糸入れ」と「紗張り」 ▷二枚型(返数型)