東大寺正倉院の宝物や
鎌倉時代の大鎧の装飾にルーツ

 形染めの発祥についての詳細は明らかになっていませんが、形染めに似た最古の手法として「革染め」の品が東大寺の正倉院に伝わっています。
 馬具の一種である鞍褥(くらじき)は、彫り抜いた木製の型の下から革をあて、踵で踏み込んで上方に出た部分を染める方法と、革に密着させた型で防染し、煙で燻(いぶ)したり藍液に浸けたりして染める方法があったと考えられています。
 今日の研究では、「形(型)紙」の誕生は鎌倉時代にまで遡ると考えられており、防染糊を用いた布地への型染めの最古の例としては、河内国(大阪)の楠氏一族所用と伝える『黄熏韋威膝鎧』(金剛寺蔵・重要文化財)の家地(甲冑の布地)に<楓枝文>が見られます。この小紋柄は主として鎧の革所、鎧の布地に当たる家地、具足下のほか武家の日常着にも利用されていたようです。

伝楠氏所用『黄熏韋威膝鎧』(重要文化財)
※天野山金剛寺ホームページより

中世末期に確立した型染めの技術
「木綿」と「藍」との出会いで大ブレイク

 右の絵図は、江戸時代初期の慶長~寛永年間に描かれた、狩野吉信筆の屏風絵『職人尽絵』の一部。中世日本の手工芸の全容を記録したこの屏風絵の中に、形(型)紙を用いて布に形(型)染めする「型置師」の作業の様子が細かく描かれています。
 このように形染めは、中世末期にはすでに専門職として成立していたことから、技術的にも確立していたことがわかります。
 この形染めが、17世紀に入って時を同じくして国内で量産化されはじめた藍染めの綿布と出会うことで、日本の服飾文化は大きな飛躍を遂げることになるのです。

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