“形”か?“型”か?、
形(型)紙の定義に関わる、最大の論争

 ここで「かたがみ」の「かた」という漢字にどの文字を用いるか-----という、一見どちらでもよさそうな問題にあえてこだわって考えてみたいと思います。
 「そめかたがみ」という漢字をネットで検索すれば、ほとんどの場合「染型紙」と表記されており、染形(型)紙に関するほぼ全ての出版物をはじめ、“ご本家”伊勢型紙をはじめ、全国の形(型)紙産地などの関連サイトで概ね例外なく「型」の字を用いています。「広辞苑」(岩波書店刊)をはじめ、「日本語大辞典」(講談社刊)など、代表的な辞書・辞典でも「染型紙」として項目が設けられています。
 しかしこの風潮に抗して、当館では、サイトタイトルにもあるように一貫して「染形紙」の表記にこだわっています。「型」とは、鋳型や金型などに代表される物理的な<フォーマット>を意味し、「形」は、舞踊や彫刻で用いられるように、創意をもとに表現された<フォルム>を意味する---という考え方からです。素材としての『型地紙』のカタと、彫り上げた作品である『染形紙』のカタの字が同じであっていいはずはない---とも思うからです。
 とはいえ、言語や文字とはその妥当性の如何に関わらず、多くの場合多数決で広まり定着して受け継げられるもの。まして他の産地が自らの産品を「型紙」と自称しているものを、あえて「形紙」と言い換えてよい道理もありません。
 というわけで、些事にこだわる頑迷さへのご批判を覚悟のうえで、当サイトでは基本的には「染形紙」の表記を使わさていただく一方、他産地の作品や技法に触れる箇所では「染型紙」の表記を使わせていただきたいと思います。この旨、来館者の皆様にはご承知おきくださいますよう、お願い申し上げます。

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