道具と細工を使い分け
意匠ごとに凝らした型彫刻の技
染形紙の緻密で多彩な意匠を実現するために、それぞれの図柄の型紙彫刻に必要な道具と技法が編み出されてきました。
錐彫り
錐のように細く刃先が半円形の彫刻刀を垂直に立て、回転させることで一つの小さな孔を掘り、その連続または大小の穴の組み合わせだけで柄を作る。孔の数は一寸四方に900~1000個以上、最大1200個。回転させる丸い穴をあけ、単純な柄だけに高度な技術が求められる技法である。
突彫り
型地紙を6枚前後重ね、表面を窪ませた「穴板」という台の上に置いて、刃先1~2㎜の小刀で垂直に突くようにして彫り進める。微妙に揺れる彫り口が独特の風合いを生み出す。型紙彫刻の最も古い技法と考えられている。
道具彫り
とくに小紋型で用いられる技で、刃先をあらかじめ菱型や花、葉、扇などの形に作った彫刻刀を使って色々な文様を均一に彫り抜く。この技法は道具の出来栄えが作品を大きく左右することから、金物生産が盛んな三木では多彩な小紋柄が生み出された。
縞彫り
定規を使って等間隔に縞柄を彫り進める。単純作業に見えても、一本の縞を彫るのに3度続けて小刀でなぞるには熟練の技が必要。一寸幅に12本彫るのが「万筋」、毛のように細く20本彫るのを「毛万筋」と呼ぶ。